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執筆者の写真裕子 小野寺

ADHDと偽るアメリカの学生


ADHDと偽り診断を受けるアメリカの学生について



アメリカの大学で学んでいる障害をもった学生の割合は日本の10倍以上となっています。なかでも最近はADHDの学生数が増加しており、一部には偽ADHDも含まれていることが問題となっています。



アメリカ国内の高等教育機関に在籍する障害のある学部生数は約347.8万人で、 学生全体の20.5%となっています(2019-2020年調べ)。

日本国内では障害をもつ学生数は58,141人で、学生全体の1.79%(2023年調べ)であり、比較するとアメリカは日本の10倍以上となります。



アメリカでは障害をもった学生が日本と比較してだいぶ多いのですが、どのような障害が多いのでしょうか。



アメリカの高等教育機関で支援を受けている学生の障害種別は精神障害、ADHD(注意欠如多動症)、SLD(限局性学習症)が多いようです。

特にADHDの割合が2000年には6.7%だったのに2008年には19.1%と3倍近くに増加しています。16年前のデータなのでその後さらに増えていることが考えられます。

(英語が苦手なため最新のデータが探せずにすいません。)



アメリカでは実際にADHDの人が増えているのでしょうか。



増えている理由は、ADHDの理解や認知が進み診断される人が多くなったことなどが考えられますが、他にもアメリカでは、詐病や偽装によりADHDの診断を受けている人がいるからといわれています。

詐病や偽装はADHDに限らず他の病気でもみられることです。様々な理由から自分の症状を偽って申告することや実際よりも重いように見せることで、何らかのベネフィットを得ていることがあります。



高等教育機関に通う学生がADHDと偽り診断を受ける理由はなんでしょうか。



なぜADHDと偽り診断を受けるのか、その理由には、大学での支援(試験時間延長や課題の軽減、試験を個別に受けるなど)を利用するためや、成績向上のため集中力を高める効果があるといわれている薬(メチルフェニデート等)を処方してもらうためなどがあるようです。その他にも娯楽や転売目的のため偽りの診断を受け薬を処方してもらうことがあるといわれています。



日本ではどうなのでしょう。



日本でもADHDの学生は増えています。2015年には障害をもった学生のうちADHDの学生は2.6%だったのが、2023年には7.0%ほどになっています。アメリカと比較するとまだ少ない数です。2008年で比較するとアメリカは19.1%、日本では0.8%でした。日本で発達障害者支援法ができたのが2004年ですので、ADHDの支援はまだまだ遅れていることがわかります。



今後ADHDへの認知や支援が進むことで、アメリカで問題となっている偽りの診断を受ける人が日本でも増えるかもしれません。



私個人の印象としては、日本ではADHDをはじめ発達障害がネガティブに捉えられがちのため、診断を受けることを躊躇する人が多いと感じます。ADHDの治療薬も本当に必要な人に処方されるように薬事法で定められています。今の時点で症状を偽ってADHDの診断を受けている人は多くないと思っております。



しかし今後アメリカと同じような問題が起こることも十分に考えられます。本当に苦労しているADHDの方のことを考えると偽りのADHDは増えてほしくないと願うところです。




【参考文献】

日暮嘉子(2017)「アメリカの大学における障碍者の実態と外国語クラスにおける学習障害者への支援について」日本語教育実践研究第4号 pp.52-70

Joseph Sadek,(2022)「Malingering and Stimulant Medications Abuse, Misuse and Diversion」Brain Sciences, 2022 Jul 28;12(8):1004.

文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)について」

(20241206参照)

日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」


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